高齢者施設など、介護が必要な方が周りにいらっしゃる方であれば、「嚥下食」という言葉を一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
今回は嚥下食(嚥下調整食)について解説していきます。
提供する際の注意点についても紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
嚥下食(嚥下調整食)とは
嚥下食は、摂食・嚥下障害者の方のような、嚥下機能が低下した方でも食べやすいように配慮された食事のことを指します。
嚥下機能のレベルに応じて、形態やとろみなどを調整することもあり、日本摂食・嚥下リハビリテーション学会では嚥下調整食と表現しています。
また、嚥下訓練に使用される嚥下訓練食品も嚥下食のひとつです。
普段私たちは、食べ物をよく噛んで飲み込んでいますが、高齢者になるとそうはいきません。
食べ物を噛むという動作一つをとっても、歯が抜けてしまったり、口周りの筋肉量が落ちてしまったりなどの影響で、上手く噛むことができなくなってしまいます。
また、飲み込むということに関しても、唾液の分泌量が落ちていることから、その能力は年齢とともに落ちてしまうでしょう。
こういった方に対して、一般的な食事を提供してしまうと、うまく食べることができません。
場合によっては、のどに詰まって窒息してしまうといったリスクも存在します。
こういった背景もあり、嚥下能力の低い方でも食べやすいよう、嚥下食が高齢者施設などでは提供されています。
嚥下食(嚥下調整食)の分類
嚥下食と一括りにしても、そのレベルは様々です。
高齢者の方一人ひとりの噛む力、飲み込む力は異なるため、適切な嚥下食を提供することが大切だからです。
そういった際の基準となるのが、「日本摂食・嚥下リハビリテーション学会 嚥下調整食分類2013」による、嚥下食の分類です。
早見表の中では、下記のように嚥下食が分類されています。
- 嚥下訓練 食品 0j
均質で付着性・凝集性・かたさに配慮したゼリー離水が少なく、スライス状にすくうことが可能なもの
- 嚥下訓練 食品 0t
均質で付着性・凝集性・かたさに配慮したとろみ水
(原則的には、中間のとろみあるいは濃いとろみのどちらかが適している)
- 嚥下調整食1j
均質で付着性・凝集性・かたさ・離水に配慮したゼリー・プリン・ムース状のもの
- 嚥下調整食 2-1
ピューレ・ペースト・ミキサー食など、均質で なめらかで、べたつかず、まとまりやすいもの
スプーンですくって食べることが可能なもの
- 嚥下調整食 2-2
ピューレ・ペースト・ミキサー食などで、べた つかず、まとまりやすいもので不均質なものも含む
スプーンですくって食べることが可能なもの
- 嚥下調整食 3
形はあるが、押しつぶしが容易、食塊形成や移 送が容易、咽頭でばらけず嚥下しやすいように配慮されたもの
多量の離水がない
- 嚥下調整食 4
かたさ・ばらけやすさ・貼りつきやすさなどのないもの
箸やスプーンで切れるやわらかさ
引用:日本摂食・嚥下リハビリテーション学会 嚥下調整食分類2013(食事)早見表
https://www.pref.osaka.lg.jp/attach/142/00000000/kyozai-i02.pdf
画一的に決めるのではなく、一人ひとりの嚥下レベルに適した食事を提供することが大切です。
嚥下食(嚥下調整食)を提供する際の5つの注意点
ここまでは、嚥下食の概要について解説してきました。
では、実際に嚥下食を提供する際には、どういった点に注意しなければならないのでしょうか。
それぞれ解説しますので、確認していきましょう。
①嚥下食に向かない食材を把握する
一つ目は、嚥下食に向かない食材を把握するという点です。
嚥下食といっても、やわらかければ良いというものではありません。
こんにゃくのような弾力のあるものや、パンのような水分量の少ない食材は、嚥下食には向かないと言えます。
また、汁物といった一見飲み込みやすそうなものであっても、口の中にとどめることが難しい高齢者の方もいらっしゃいます。
そういったさらさらとした食事は、とろみ剤などを活用して、食べやすくすることが大切です。
②きざみ食は避ける
二つ目は、きざみ食についてです。
きざみ食とは、その名の通り、細かく刻まれた食事のことを指します。
このきざみ食は、長年高齢者向けの食事として扱われてきましたが、嚥下食の研究が進むにつれて、摂食・嚥下が困難な方にとっては不適切であるという認識が広まってきました。
理由としては、細かく刻まれているためばらばらになりやすく、口の中で食塊が形成しづらく、食べ物を気道に入れてしまうといった誤飲のリスクがあることなどが挙げられています。
嚥下食を提供する際には、きざみ食は避けるようにしましょう。
③とろみ剤を使用する
三つ目は、とろみ剤の使用です。
食べやすく、飲み込みやすくするために適切にとろみ剤を活用することが大切です。
とろみ剤としては、ゼラチンや増粘剤が代表的でしょう。
ただし、温度や量を間違えると、とろみ剤が口の中で溶けてむせの原因になってしまったり、飲み込みにくくなってしまうこともあります。
適切な量を活用するように注意しましょう。
④正しい摂食・嚥下難易度レベルを把握する
四つ目は、正しい摂食・嚥下難易度レベルを把握することです。
一人ひとりに適切な嚥下食を提供するためには、その方の摂食・嚥下難易度レベルをあらかじめ把握しなければなりません。
理想としては、機器や専門の検査を用いての判定を、医師の協力のもと行うことになるでしょう。
しかし、すべての高齢者の方に向けてこういった検査を行うには、専門スタッフの確保や設備が必要となるため、「食物形態選定チャート」を活用して、嚥下障がい度のスクリーニングを行うのがよいでしょう。
⑤見た目にこだわる
五つ目は、見た目にこだわるという点です。
嚥下食は食べやすくすることが大前提となるため、ペースト状やとろみのあるものになりがちです。
しかし、こういった嚥下食は「あまり見た目がおいしそうではない」といった印象を持たれがちです。
食事は単なる栄養補給ではなく、生きる上での楽しみの一つです。
経口で食事を取ることができる以上、その楽しみを維持できるよう、味も見た目も良い食事を提供していくことも意識しておきましょう。
まとめ
いかがだったでしょうか?
高齢者施設など、年配の方に食事を提供する方であれば、嚥下に関する知識は必要不可欠です。
まずは、嚥下食の分類を把握し、一人ひとりの嚥下レベルにあった、見た目も味も良い食事を提供していくことを目指していきましょう。
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